GPD Pocket:製品レビュー:UMPCとしては満点の出来

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 今年の3月くらいからクラウドファンディングで出資者募集が行われ、一部UMPC(ウルトラモバイルパソコン)クラスタの間で加熱していた「GPD Pocket」ですが、実際にファンディングの報酬が送付され、それも無事配布が終わって今度は一般販売されるようになってまた一部で評判になっているようです。
 私は3月末に出資して8月初頭に報酬として入手したのですが、このGPD Pocketがかなり便利で今生活の中にかなり深く入り込んでいます。
 TSUKUMOなどでも入手できるようになった今、GPD Pocketを検討している方もいらっしゃると思うので、今GPD Pocketが気になっている人を対象としたレビューをしてみようと思います。

GPD Pocketとは

 GPD Pocketとは、中国のShenzhen GPD Technologyという会社が販売する、7インチ液晶を持った超小型ノートパソコンです。
 サイズとしてはNintendo 3DS LLを一回り大きくした程度の、ジーパンの尻ポケットどころか前ポケットに入ってしまうサイズで、それでいてフルの物理キーボードを備えるフルスペックのWindowsパソコンです。
 通常のノートパソコンよりも二回り以上小さく、いわゆるUMPCと言われるカテゴリに分類されるパソコンです。
 UMPC自体が相当な昔に廃れてしまった、それでいて未だに一定数の根強いファンがいるジャンルのため、このGPD Pocketはクラウドファンディング開始時から熱い注目を集めていました。

GPD Pocketのスペック

 GPD Pocket自体は下記のスペックで構成されています。

・OS:Windows 10 Home
・CPU:Intel Atom Z8750
・メモリ:8GB
・eMMC:128GB
・液晶:7型(1920×1200)
・バッテリー:7000mAh
・キーボード:USキーボード
・スピーカー:モノラル出力
・重量:480g

 スペックについてはサイズの近い「7インチタブレット」と比較しながら紹介します。

 OS:Windows 10 Home

 搭載されているOSはWindows 10 Homeです。Proではないですが一般使用には問題ないエディションです。
 ノーマルのWindows10ではなくカスタマイズされたものが入っており、普通のWindows10を上書きすると設定やデバイスドライバの追加が必要になるので注意が必要です。
 タブレットと違いAndroidやiOSではなく、ごく普通のWindowsが入っているので、スペックが許す限り今使っているパソコンと同じソフトが同じように使えるという事になり、これはタブレットと比べると大きなアドバンテージです。

 なお、セットアップしたばかりのGPD Pocketには信用できない証明書がインストールされているので、それが気になる方は証明書を取り除くか、普通のWindows10を上書きして下さい。

CPU:Intel Atom Z8750

 GPD PocketはCPUにAtomの最終世代最高クラスの「Z8750」を使っています。
 AtomはCore iプロセッサと比べると非力なCPUですが、タブレットで使われている「z3580」クラスに比べると性能で勝っていますし、Atomの中では最終世代かつ最高クラスのCPUなので性能もこなれていて、重量級の処理を走らせないのであれば十分に使えるスペックになっています。
 メールの送受信、ブラウザでWebの閲覧、Youtubeで動画の閲覧、EXECELで表計算、クラスの処理であればCPUが足を引っ張る事はまずありません。
 動画の編集や3Dの制作などは能力的に厳しいですが、持ち歩いてブログを付ける、メディアプレイヤーとして活用するのであれば十分な能力があります。

 個人的にはカスペルスキーのアンチウィルスソフトを使いながらGoogleChromeで20個のタブを開きiTunesで音楽を聞きながらThunderBirdでメールの送受信をしても動作がもっさりする事はありませんし、CPU使用率も70%くらいで済んでいますので、まだ余裕が有る感じです。

メモリ:8GB

 GPD PocketはメモリはAtom z8750で積める最大量である8GBのメモリを搭載しています。
 通常のノートパソコンで4GB、タブレットだと1~4GBの搭載である事が多いのですが、実質その倍量のメモリがあるのでメモリにはかなり余裕が有ると言えます。
 普通にパソコンを使っていて4GBのメモリを使い切るのはかなりヘヴィな使い方だと言えるので、GPD Pocketで8GBを使い切るのは若干無理があるというか、そこまで要求スペックの高い作業はそもそもノートパソコンに向かないとも言えるので、メモリが原因でGPD Pocketが使いづらい、という事はほぼ考えられないでしょう。

eMMC:128GB

 内部ストレージはSSDではなくeMMCで、搭載容量は128GBになります。
 SSDではないのは残念ですがHDDと違って物理的に回転する機構がないので破損しづらい特性があり、SSDほど早くはありませんがHDDに比べると比較的早いストレージなのでそれほど不満に感じる事はないと思います。
 タブレットだと16~64GBの容量である事が多いのですが、マックス量の倍のストレージがあるという事なので相当容量に余裕があります。
 普通のノートパソコンに比べると容量が少ないのは否めませんが、USBメモリを活用する、クラウドストレージサービスを使うなどの対処方法があるので工夫のしどころですね。

液晶:7型(1920×1200)

 GPD Pocketは7インチの液晶で、画面表示サイズは1920×1200です。
 タブレットと比較しても解像度は高く、発色も良いので使用感もかなり良いです。
 しかし、はっきり言ってオーバスペックで、このサイズで1920×1200ドットを表示されても目がついて行きません。
 Windowsの機能で120%~150%に拡大して使う事をお勧めします。

 なお、内部的には液晶は横向きではなく縦向きで設定されているので、BIOS画面やLinuxをインストールした時、Windowsをインストールし直した時は画面表示が縦横逆になってしまいますので随時設定から修正して下さい。

バッテリー:7000mAh

 バッテリーは公称で7000mAhです。いわゆる普通のタブレットより若干多い感じですね。
 実使用で4~5時間は保つだけのバッテリがあるので、普通に使う分にはバッテリが問題になる事は少ないと思います。
 Windowsでのバッテリ認識がおかしく正常な数値が確認できない問題があり正確な数字を把握できないのでバッテリ管理は個々人が頑張らなければならない部分なのはマイナス点です。

 また、充電しながらの使用が推奨されておらず、使用時はバッテリ動作が基本となります。充電しながら使用すると発熱したりWi-Fiが認識されなかったりするという問題があります。
 USB-Cでの充電はPD対応ですが、OS起動時にしかPDに対応しないので、PD充電は推奨されない結果になります。
 また、付属の充電器、USB-CケーブルはPD対応ではないのでPDを使いたい時は別途購入が必要です。

 バッテリ周りについてはユーザー管理でユーザーが気にかけなければならない事が多く、若干負担があります。

キーボード:USキーボード

 GPD Pocketのキーボードは変形USキーボードで、JISキーボードはありません。
 キータッチが深めなチルトキーボードで、数字・記号・デリートキーとバックスペースが特殊な位置にあるので慣れるには時間が必要でしょう。しかし、慣れてしまえばタッチタイピングで使えます。
 実際にこの記事はGPD Pocketで入力していますが大きなストレスは感じていません。

 7インチのサイズにこのフルキーボードを備えているというのがGPD Pocketの最大の魅力と言える部分で、このキーボードに慣れる事ができればGPD Pocketは一生モノの相棒になり得ます。
 ネットの反応ではキーボードの配列が変態すぎる、という感じですが、実際に使ってみれば多分1週間前後で慣れる事ができると思います。
 私は今キーボードを打つ用件は全てGPD Pocketで行っていますが大きな問題はありません。

スピーカー:モノラル出力

 残念な事に、GPD Pocket本体の音声出力はモノラルスピーカーのみです。
 音は大きめで綺麗な音が出ますが所詮モノラル、ちゃんとした音が聞きたい方はステレオのヘッドホン端子があるのでそれを使う方が良いでしょう。YouTubeを流しっぱなしにする程度なら十分使えますが、その程度です。
 ヘッドホン端子は接続時にブツ音がするという問題がある個体があるようですが、デバイスドライバの更新で改善するようです。

重量:480g

 GPD Pocketの重量は公称480グラム、実測ではおよそ500グラムを若干下回る程度です。
 パソコンとしては信じられない軽さで、持ち歩いて使うには全く問題のない重さと言えます。
 大きさとも相まって、服のポケットに入れて持ち運べるノートパソコンとしてどこにでも持って歩けます。
 500ミリリットルのペットボトルよりも軽いので、ジーパンのポケットにもセカンドバックにも問題なく収納可能です。

GPD Pocketのお勧めの使い方

 スペックはこれくらいにして、使い方について入っていきましょう。
 GPD Pocketは「一台目のパソコン」としては癖が強すぎる上に容量が少ないので、「二台目以降のパソコン」として購入するのがお勧めです。
 GPD Pocketの大きな特性としては「とにかく軽い」「ポケットサイズだが7インチの液晶で表示できる」「フルの物理キーボードを備えている」という部分があり、気軽にどこでも持って歩いてキーボードをベシベシ叩く、という使い方が最も適していると言えます。その使い方で言うとテザリング可能なスマホと合わせて「どこでも使えるフルキーボードなネット端末」として使うと非常に便利に使えるのでお勧めです。
 GPD Pocketの他に重い処理を走らせられるパソコンを持っているのであれば、それをネットを介してリモート操作する事で擬似的に重い処理を走らせる事もできますし、そういう操作をするのであればフルキーボードである事のメリットも出しやすいので、「ネット経由で何かをする端末」として意識すると強みが出しやすいと思います。

GPD Pocketのネックポイント

 逆にGPD Pocketのネックポイントで言うと、「CPUが非力」「ストレージが小さい」「バッテリ管理が面倒」というのが挙げられます。
 最終世代の最高級とは言えAtomはAtomなので重量級の作業はこなせませんし、128GBというストレージはタブレットとしては優秀ですがパソコンとしては弱い部類です。そしてバッテリ管理が面倒なのはどうにもなりません。
 しかし、CPUの非力さは強力なパソコンを別に用意してリモート操作すればいいですし、ストレージはUSBメモリなりクラウドストレージサービスを使えば解決できます。そしてバッテリ管理は「気をつける」だけでいいので、それらの理由は「だからGPD Pocketは使えない」という理由にはなりえないと思います。

 また、GPD Pocketは小さいですが「ノートパソコン」なので、まともに使おうと思ったらデスクが必須です。両手に持って親指で操作する方法もなくはありませんが現実的に便利とは言えず、使う時は必ず床なりデスクなり「下面を支える面」が必要なので注意が必要です。

GPD Pocketはどういう人にお勧めか

 GPD Pocketは非常に癖が強いんですが、高機能でまとめたUMPCとしては異様に良く出来ている製品だと言えます。
 GPDPocketはUMPCに思い入れがある人や興味のある人だけなく、強力なネットブックが欲しい人、気軽に持ち歩けるキーボード付きのパソコンが欲しい人なんかには非常にお勧めです。
 しかし(日本で入手できるとは言え)海外製品である事も含め、非常に癖が強いパソコンなので、慣れるまで根気強く付き合う事ができない人や、分からない事や困った事をウェブ検索を通じて解決する事が難しい人、小ささや軽さに価値観を見いだせない人は別のノートパソコンにした方が幸せになれると思います。

ぶっちゃけた結論

 ここまで書いておいてからぶっちゃけた結論を出すと、GPD Pocketは「小さくて軽くてポケットに入る【まともに使えるスペックの】フルキーボードを備えたウルトラモバイルパソコン」であるという側面が非常に強いので、小さい・軽い・ポケットに入る・フルキーボードというキーワードでピンとこない人には値段相応の価値があるかは微妙です。しかしピンとくる人にはこれしか選択肢がないレベルで性能と外観と価格のバランスが高レベルでまとまっているので、そういう人は最終的には買うハメになるのでジタバタせずに今買っちゃった方がいいです。
 将来的にSIMスロットが載るんじゃないか、それまで待ったほうが良いのでは、という意見もありますが、まあ普通に考えてSIMスロットが載るような新バージョンは出ないと考えた方が合理的ですし、買うなら一瞬でも早い方が「GPD Pocketを持っている」という満足を味わう時間が増えるので良いですよ。

 と、まあ、身も蓋もない結論になったのですが、どうでしたでしょうか。
 この記事で誰かの背中を押せたのであれば幸いです。

この記事を書いた人 Wrote this article

如月翔也 男性

如月翔也です。ガジェットとAppleが大好きな中年男です。ガジェットがお好きな方、Appleがお好きな方、トラブルでお困りの方はぜひブログをごらん下さい。コメントを貰うと非常に喜ぶのでお気軽にコメントをお願いします。  詳細なプロフィールは「https://saigetudo.com」を御覧ください!


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